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インフルエンザの対処法

  • 2005年8月30日

毎年のことながら「今年はインフルエンザの予防接種はどうしようかしら?」と悩まれる方も多いかと思います。「タミフル」というインフルエンザの特効薬が出現したことによって予防接種に対する考え方も少し変化したように思えます。つまり「予防接種を受けてもインフルエンザにかかってしまうのなら、予防接種は受けずにかかったらすぐタミフルを飲めばいい」という考え方です。そこで、皆さんの悩みを交通整理する意味でインフルエンザワクチンの最新情報などを交えながら、こども診療所の考え方をご紹介したいと思います。

まずインフルエンザワクチンの効果ですね。これは以前から諸説紛々で、混乱のタネとなっていた問題なのですが、最新の研究では「完璧にインフルエンザの発病がおさえられるのは接種した人の10〜30%」とかなり低い数字が出ています。この数字を出した研究グループの代表の医者は「インフルエンザの予防接種は発病をおさえるというより重症化を防ぐ目的で使うべき」、「老人のインフルエンザ肺炎、小児のインフルエンザ脳症(脳炎)の予防にはきわめて有効」と言っています。毎年「効果はあまり期待しないでくださいね」などと情けないことを言いながら接種を行ってきた者としては大変納得のいく考え方です。

タミフルという強力な武器を手にした今では、脳症(脳炎)が心配な方と10〜30%でも期待したいという方だけが接種を受けてはどうでしょうかというのがこども診療所の考え方です。

それ以外の方は早期診断・早期治療で乗り切っていきましょう。と簡単に言えればいいのですが、早期診断・早期治療にも問題はあります。

まず診断です。鼻の奥の粘膜を綿棒でこすって、そこにインフルエンザウイルスがいるかどうかを15分程度で調べることのできる検査キットが普及していますので、診断自体は簡単です。問題はいつ検査を行うかです。理論上は発熱した時点ですでにウイルスの増殖は始まっていますので、検査によってウイルスを見つけることは可能なはずです。ところが実際には、発熱後3〜4時間程度だとインフルエンザなのにウイルスが見つからないということがよくあります。増殖が不十分なため検査の網にひっかからないのかもしれません。そこでこども診療所では「38度以上出てから8時間(8度を超えて8時間)」というのを検査の目安にしています。蛇足ながら保険診療では診断のための検査は1回しかできません。だからタイミングが大事なのです。

そして次に治療開始のタイムリミットです。タミフルは驚くほどよく効くクスリで、早い子では飲み始めた翌日にはもう熱が下がってしまいます。なかなか効かない子もいますが、平均すれば2〜3日以内に元気になってしまいます。しかし、発病してから48時間以内に飲み始めなければ効果は期待できません。たとえば、土曜日の早朝に発熱して8時間待っていたら病院が閉まってしまった。月曜日の朝病院に行ったらもう48時間以上たっているからタミフルは効かないと言われた。という事態も考えられるのです。もちろん土曜の夜や日曜に夜間診療所や救急病院を受診することは可能です。またタミフルは1歳未満の乳児に対する安全性は確立していない(使ってもいいですけど安全性は保証しませんよ)という注意書きが添えられています。

では次にインフルエンザ脳症(脳炎)についてお話ししましょう。ここでは脳炎という言葉は使わず脳症にまとめてしまいます。インフルエンザ脳症はけいれんや意識障害で突然発症し、あれよあれよという間に病状が進行し生命の危険もともなうこわい病気です。0歳代から10歳ぐらいまでの小児に起こりますが、 1歳から4歳で初めてインフルエンザにかかったという子に集中しています。インフルエンザの初期に起こることが多いので、タミフルを飲み始めてもその効果が出る前に脳症を併発してしまいます。脳症がご心配でしたらやはり予防接種を受けておいたほうが安心かと思います。予防接種は生後6か月以降でしたら受けることができます。

さてではインフルエンザの予防接種を受けるとして、いつ受けたらいいのかということも悩みのタネです。こども診療所では「少なくとも1回目の接種は11 月中に済ませておきましょう」とお勧めしています。そうすれば年内に2回目を接種することが可能です。お子さんの場合2回目を接種しても約1週間は免疫の働きがフル稼働しませんから、流行が始まってからでは間に合わないおそれがあるのです。大人の方は1回の接種ですし、接種後数日で免疫パワーが全開しますので、流行が始まってからでも間に合いますが、発病予防という意味ではあまり期待できないものとご理解ください。

こども診療所でのインフルエンザ予防接種開始は10月中旬以降になる予定です。きちんとした日程が決まりましたら、院内のお知らせ掲示板(パソコン)やホームページでお知らせいたします。接種を受けるかどうかよくお考えになって、ご自分で判断なさって下さい。

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