- 2005年9月30日
平成18年4月1日から、麻疹と風疹の予防接種が大幅に変更されます。
まず、使われるワクチンが変わります
今まで別々に接種していた麻疹と風疹が一緒になって、麻疹(Measles)風疹(Rubella)混合ワクチン(英語の頭文字を取ってMRワクチン)が使われます。10年以上前に副反応が問題で使用中止になったMMRワクチンとは全く別のワクチンです。今までどおり麻疹と風疹を別々に接種したいという方は、任意接種とみなされて接種票を使うことが出来なくなります(有料)。
(MMRワクチンは、「麻疹の予防接種の際に麻疹単独ワクチンの代わりに使ってもよい」という程度でしたが、今回のMRワクチンは、「麻疹と風疹の予防接種はこのMRワクチンによって行う」と断言しています)
次に、接種回数が変わります
今まではそれぞれのワクチンを1回だけ接種していましたが、4月以降はMRワクチンを2回接種することになります。接種時期は1歳から2歳の間に1回目(第1期)、小学校に入る前の1年間に2回目(第2期)となります。さらに、接種票を使える時期(定められた1回目と2回目の接種時期)がとても厳格になります。ちなみに今までは「生後12か月から90か月の間(1歳から7歳6か月の間)」なら、いつでも接種票を使うことが出来ました。
これからが重要です!
平成18年4月1日以降に1歳になるお子さんは「新しい制度で接種をお受けください」ですみますが、それまでに2歳になってしまったお子さんは、現在配布されている接種票が使えなくなってしまいます。3月31日までなら、2歳になっていても7歳6か月未満であれば、麻疹と風疹の予防接種を別個に受けることが出来ます。
また、これらのお子さんが小学校入学1年前になった時点で、麻疹か風疹のどちらか一方だけしか接種していない場合には、第2期の接種対象者から外されてしまいます。(両方接種済みのお子さんでも、現在の制度で接種を受けたお子さんは対象にならないとの情報もありますが、まだ確認できていません。なにしろお役所言葉で書かれているものですからどちらにも解釈できてしまうんです。)
いずれにせよ、平成18年4月1日の時点で2歳から7歳6か月の間に入るお子さんは、3月31日までに麻疹・風疹両方とも接種を済ませておくのが無難だと思います。
4月1日に1歳以上2歳未満のお子さん
4月1日に1歳以上2歳未満のお子さんで、麻疹か風疹のどちらかしか接種していないお子さんの場合、4月1日以降単独ワクチンの接種は任意接種ということになるのですが、経過措置として、区市町村が費用を負担することを厚生労働省は求めています。ただし、この場合も2歳になる前だったらということです。4月1日に2歳未満でも接種する時点で2歳になってしまっていたら対象にはなりません。
では、江戸川区ではどうなるかと申しますと、東京23区では接種票の相互乗り入れが行われていますので、江戸川区だけで方針を決めることが出来ません。東京都・特別区代表・東京都医師会の三者による協議会を開いて方針を決定することになっていますが、おそらくは公費負担が実現するだろうと思います。4月1日以前に接種時期を迎えたお子さんに対して、「4月1日まで待って新しい制度で接種を受けて下さい」ということなど倫理的に許されることではありません。待っている間に病気にかかってしまうことだってあるのですから。
とはいえ、4月1日に1歳以上2歳未満のお子さんでも、3月31日までに接種を受けられるのであれば、経過措置に期待をせず、受けられるときに受けてしまったほうが安心できると思います。
実際にかかってしまった
ここまでは接種のことだけ述べてきましたが、実際に麻疹あるいは風疹にかかったことのあるお子さんはどうなのかといいますと、本物の麻疹(あるいは風疹)にかかれば当然その病気に対する免疫を獲得します。ですから、実際に麻疹(風疹)にかかったことのあるお子さんは、予防接種済みのお子さんと同じです。「かかった=接種済み」としてお読みください。
最後に
今回の改正の背景についてお話しいたします。
日本は世界の中で予防接種に消極的な国です。もちろん予防接種というものが病気のもとを体内に入れるという原理で成り立っている以上、全く危険がないとは言えないわけですから、慎重であることは大切なのですが、世界の目には「消極的」と映るようです。
特に麻疹(はしか)に関しては、アメリカから「麻疹の輸出国」と名指しで非難されるなど、予防接種の普及は遅れています。実際に国内ではかなりの頻度で麻疹が発生し、毎年500人程度の方が麻疹で亡くなっています。
麻疹対策は予防接種が一番で、麻疹ワクチンは、5人に1人ぐらい発熱するなどの問題点はあるものの、100人の方に接種すれば98〜99人は完璧に発病を阻止できるほど優秀なワクチンです。この麻疹ワクチンの接種率を向上させ、ひいては麻疹を国内から撲滅しようというのが、今回の改正の狙いです。
また、風疹に関しては、小児が風疹に感染しても比較的軽症で済んでしまうため、やはり接種率が低迷しています。近年風疹の小流行が見られ、風疹に感染した妊婦さんから先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれてしまうという問題が発生したため、国民が揃って赤ちゃんの健康を守るという趣旨で、風疹がはやらない国にしようと、麻疹との混合ワクチンによって接種率を向上させようとするものです。