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トピックス(2015年)

今年のノロは軽いけど長生き

  • 2015年12月31日

いよいよ2015年も今日でおしまいです。1年間こども診療所ホームページのご愛読ありがとうございました。

幸いインフルエンザはほとんど流行らしい流行を見せませんでした。その理由はノロウイルスによると思われる感染性胃腸炎の流行がいつもの年よりも延々と長引いているためと考えられます。

いつもの年はノロは11月末から12月始めにかけて流行のピークがあります。感染力も強く大流行となります。今年も確かに感染性胃腸炎は大きな流行を見せましたが、例年ほど感染力も強くなくまた症状も軽いのが特徴です。何よりも大きな特徴は、流行がだらだらと続いているという点です。

例年ですと感染性胃腸炎の大流行はとっくに終わっていますから、今頃はインフルエンザシーズンが始まり、学級閉鎖のニュースで賑わっている頃です。

この順番はずっと以前から続いていて、「ノロが終わればインフル」というのが我々小児科医にとってのほぼ常識でした。今年はノロの流行がまだ終わっていませんから、インフルはずっと下火のままです。

今年の秋頃、新型ノロウイルスといってメディアが大騒ぎをしました。新型インフルエンザの時のように、新型ノロウイルスに対する免疫を持っている人が少ないから大々的な流行になると騒ぎ立てたのです。

確かに今はやっているのは新型のノロウイルスだとは思います。でも、先に申しましたように、感染力もそれほど強くなく、また症状も軽いので、マスコミが騒いだほどの流行にはなっていません。

特に症状については、こども診療所でノロウイルスと診断したお子さんで、脱水が懸念されたお子さんは一人もいませんでした。吐く回数もいつもの年より少なくグタ〜ッとなってしまうようなこともほとんどありませんでした。

マスコミの喧伝は空騒ぎに終わった感(軽い)がありますが、流行がいつまでも続いている(長生き)というのも今年のノロの特徴です。

こども達は冬休みに入り、教室のような場所に大勢のこども達が集まる機会がずっと減りましたから、ノロの流行もそろそろ終わるのではないかと思われますが、そうすると次にはインフルエンザが待機しています。

三学期にはインフルエンザの遅ればせの流行が始まることが予想されます。こども診療所での予防接種は終了しましたが、マスク・うがい・手洗いなどのインフルエンザ予防対策に十分気を遣って三学期をお迎えください。

今シーズン初の学級閉鎖(江戸川区)

  • 2015年11月6日

江戸川区で今シーズン初となるインフルエンザによる学級閉鎖が出ました。

小岩地区にある小学校で、3つの学年の合計6クラスが、昨日11月5日と今日11月6日の2日間閉鎖されました。

全校生徒約400人の内約60人が欠席し、その中の45人ぐらいがインフルエンザの診断を受けているとのことです。

この何年か、インフルエンザの流行が早まる傾向があります。

予防接種をお考えの方はなるべく早くスタートするようにしてください。

インフルエンザワクチンが変わりました

  • 2015年9月4日

「こども診療所のブログ」ではすでにお知らせしてありますが、2015−2016シーズンのインフルエンザワクチンの組成(組み合わせ)が変わりました。

その辺の所を少し詳しくご説明いたします。

 

《インフルエンザワクチンの組み合わせ》

ワクチンの組成は去年まで、Aソ連型(H1N1)とA香港型(H3N2)、それにB型を加えた3種混合ワクチンでした。ちなみに去年のワクチン製造のもととなったウイルスは次の通りです。ワクチンのもとになるので「株(かぶ)」と呼びます。

【 A型株 】
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)
A/ニューヨーク/39/2012(Xー233A)(H3N2)
【 B型株 】
B/マサチューセッツ/2/2012(BXー51B)

地名はそのウイルスが採取された土地名、2009とか2012というのはそのウイルスが採取された年です。去年はどういうわけかすべてアメリカで採取された株が使われていました。

それでは今年のワクチン株はどうなっているでしょうか?

ワクチン株はWHOが世界中から集めた流行株のデータを分析し、毎年春先にその年の流行株を予測し、「推奨株」として発表します。

各国はそれにその国独自のデータを加えて分析し、夏前にワクチンメーカーにその冬使用するワクチン株を知らせます。

メーカーはそれからワクチン製造に取りかかるわけですが、ワクチン株も製法もすべて同一基準で作られますから、メーカーが違っても国内で生産されるワクチンはすべ同じ規格になっています。

さあそれでは今年のインフルエンザワクチンの組成はどうなっているでしょう!

【 A型株 】
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09
A/スイス/9715293/2013(NIBー88)(H3N2)
【 B型株 】</span>
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)

ありゃりゃ?!
B型株が2種類に増えて四種混合ワクチンになっていますね。
その理由をご説明いたします。

従来のインフルエンザワクチンはA型に対してはそこそこの効果が期待できても、B型に対する効果はあまり期待できないというのが通説でした。B型インフルエンザウイルスにはA型のようにH1N5とかH3N2といった明確な違いがないので、「とにかくB型」という形でワクチンが作られていてB型インフルエンザウイルスの微妙な違いに対応できていなかったためと考えられます。

ところが近年B型インフルエンザウイルスの中でも、上に示したように「山形系統」と「ビクトリア系統」という群が混合で流行していることがわかってきました。WHOは数年前からB型のワクチン株を2種類に増やすことを推奨していました。それで我が国でも今シーズンから2つの群のウイルス株をもとに四種混合ワクチンを作ることになったというわけです。

今シーズンからはB型インフルエンザに対しても効果が期待できるようになることを期待しています。

ところで、ワクチン株が増えた分、接種量(注射の量)も増えるのでしょうか?

接種量は変わりません。
DPT三種混合ワクチンに不活化ポリオワクチンが加わって四種混合ワクチンになった時も、接種量はDPTの時と同じ0.5mlでした。でも、不活化ポリオワクチンを単独で接種する時は、単独であるにもかかわらず0.5mlを注射します。

え〜〜〜っ!どおしてぇ〜〜〜?

ワクチンの効果というのは、接種量の中に含まれる抗原物質の量で決まります。抗原物質が多く含まれた(濃い)ワクチンなら接種量は少なくてすみます。三種混合から四種混合にした時、それぞれのウイルス株を濃いめにすれば接種量全体を増やさなくてすみます。

といえば話は簡単なのですが、実際はもっと複雑な理由があります。ここから先はブログでは省略しましたが、ここではかいつまんでお話しします。

すべてのワクチンは細菌やウイルスなどの病原体を使って作られます。病原体は微生物ですから、必ず蛋白を含んでいます。ワクチンの副反応を起こす犯人はほとんどの場合この蛋白なのです。そして蛋白の量が増えれば増えるほど副反応は起こりやすくなるのです。

たとえば、はしか(麻疹)ワクチン(M)と風疹ワクチン(R)を混合してMRワクチンを作るとします。これらのワクチンを単独で接種するときには、どちらのワクチンも1回量は0.5mlです。MとRをそのまま混ぜれば1回接種量は1mlになります。

その中(1ml)に含まれるそれぞれのワクチンの抗原物質の量は変わりませんが、蛋白の量が増えます(単純に2倍になるわけではありません)。それだけ副反応が起こりやすくなります。

そこで、MとRをそれぞれ半量(0.25ml)ずつ混ぜるとします。そうすると蛋白の増加は抑えられますが、抗原物質の量が減って、副反応は出にくいけれど効果の薄いワクチンになってしまいます。

混合ワクチンを開発するときには、常にこのジレンマがつきまとうわけです。

さらに我が国では(他の国々もそうだと思いますが)、ワクチン1回接種量に含まれる蛋白量の上限というのが定められていて、副反応に対する配慮がなされています。

また、1回接種量を増やすと、蛋白の量だけでなく、接種を受ける人への負担も増加します。

このようなジレンマや多くの制限を乗り越えて開発されるのが混合ワクチンなのです。

「四種混合になっても接種量は変わりません」と簡単に申し上げましたが、実はこのような努力の結晶なのだということをご理解下さい。

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