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Hibワクチンのすべて

  • 2009年5月17日

インフルエンザ菌b型(Hib)による細菌性髄膜炎ってどんな病気?

脳 や脊髄は髄膜という膜で包まれています。この膜と脳や脊髄の間を髄膜腔といって、そこには髄液という液体がゆっくりと循環しています。髄液は髄膜で作られ ますが、この髄液中に細菌が侵入すると髄膜が炎症を起こして髄膜炎が発症します。炎症を起こした髄膜はたくさんの髄液を作ってしまうため圧が上昇して脳や 脊髄を圧迫します。そうすると脳はむくんでふくれあがり、頭蓋骨に押される形になりさらに圧が高くなり脳の組織や機能が傷害されます。細菌そのものも脳に 障害を引き起こすため、抗生物質や脳の圧を下げる薬を使って治療をし、髄膜炎を治すことができても様々な程度の後遺症を残してしまうことがあります。もち ろん不幸にして救命できないこともあります。

この髄膜炎を引き起こす細菌としてはインフルエンザ菌以外にも色々な種類のものがあります。代表的なものとしては大腸菌、肺炎球菌、B群溶血性連鎖 球菌などが挙げられます。1970年代まで日本では、大腸菌や肺炎球菌による髄膜炎が多かったのですが、1990年以降インフルエンザ菌による髄膜炎が増 加し、2000年以降、0歳から4歳までの赤ちゃんや小さなお子さんの髄膜炎の原因としてはインフルエンザ菌、とりわけインフルエンザ菌b型がダントツ トップで、しかも細菌性髄膜炎全体に占める割合は増加傾向にあります。

アメリカではずっと前からインフルエンザ菌による細菌性髄膜炎が多く、そのためにHibワクチンも早くから使われていたわけですが、日本でもインフルエンザ菌が増加しているというのは、生活の欧米化が関係しているのかもしれません。

髄膜腔になぜ細菌が侵入してしまうかといいますと、血液から侵入します。ではどこから血液に入るかというと、それはのどの感染からであったり、尿の 通り道の感染からであったり、またまれに中耳炎から頭蓋骨を破って直接髄膜腔に侵入することもあります。小さな赤ちゃんほど一般的な感染から細菌が血液中 に入りやすいのです。

本来脳には血液脳関門といって、細菌に限らず血液中の有害物質が脳に侵入できないようにするバリアーがあります。しかし、小さな赤ちゃんではこのバリアーがまだ未発達なために細菌は比較的容易に脳へ侵入してしまうのです。

下の図をご覧ください。日本では毎年約600人のお子さんがインフルエンザ菌(Hib)による細菌性髄膜炎にかかっています。そのほとんどは生後3ヶ月以上5歳以下です。その理由は次のように考えられています。

 

新生児期の赤ちゃんにはお母さんからもらった移行抗体という免疫があるのであまり(絶対ではありません)かかりません。3〜4ヶ月頃この移行抗体が なくなると病気になる率が高くなります。その後2〜3歳を過ぎる頃から、自然の免疫が発達したり、不顕性感染(感染はしたけれど発病しなかったということ です)で抗体を獲得したりで発病率は低下し、5歳を過ぎたら発病しないと言ってもいいほど少なくなります。

そして、600人のうち約5%のお子さんは不幸にして命を落とし、約25%には後遺症が残ってしまいます。後遺症は神経系のもので、聴力がわずかに 落ちる程度の軽度のものもありますが、けいれんが頻発して薬を使ってもなかなか止まらないようなてんかんとか、ほとんど植物状態と言えるほど重症の後遺症 を残すことも少なくありません。

私が東大病院小児科で研修医として小児科医のスタートを切ったとき、最初に受け持ったのがほとんど植物状態だけどけいれんが頻発して家庭での看護は とても難しいという髄膜炎後遺症のお子さんでした。30年以上も前の1973年のことですから、原因となった細菌はインフルエンザ菌ではなく肺炎球菌でし たが、細菌性髄膜炎の怖さを身にしみて感じたものでした。

その後現在までに(といっても病院に勤務していた15年ほど前までですが)5〜6人の細菌性髄膜炎のお子さんを治療する経験がありましたが、運がい いのか腕がいいのか、全員何の後遺症もなく元通り元気に治ってくれました。若い頃の経験(昔の話という意味です)なので、インフルエンザ菌が原因だったお 子さんは一人だけだったと記憶しています。運がよかったと言うべきなのでしょうね。

運がよかったことの他にもう一つ理由があるかもしれません。それは昔は抗生物質がインフルエンザ菌にもよく効いたということです。近年髄膜炎を起こ したインフルエンザ菌の耐性化の進行が問題になっています。昔はよく効いた抗生物質でも最近はよく効かなくなってきているのです。そのためにインフルエン ザ菌による髄膜炎の治療はさらに難しいものになっているということができます。

となると、インフルエンザ菌b型(Hib)による細菌性髄膜炎を予防する手立てはないものか?予防するにはどうしたらいいだろうか?という話になって開発されたのがHibワクチンというわけです。

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