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肺炎球菌ワクチンのすべて

  • 2010年9月18日

ブログに連載した「肺炎球菌ワクチンのすべて」を「Hibワクチンのすべて」同様、一括して掲載いたします。Hibワクチンの時も大変長くなってしまいましたが、今回はさらに長い文章になってしまいました。そこで、重複する部分を削除し、図表はすべて割愛し、文章の入れ替えなども行ってなるべく短くなるようにいたしました。それでも「Hibワクチンのすべて」の2倍近くの長さになってしまいました。大変でしょうが是非最後までお読みください。そして、お子さんの接種をどうするかはご自分で判断なさってください。

図表入りの全文はブログに掲載されています。当院院長のブログ「こども診療所のブログ」のカテゴリー「ヤブログ予防接種講座」に掲載されています。

2つの肺炎球菌ワクチン

現在日本で使われている肺炎球菌ワクチンは2種類あります。一つは商品名を「ニューモバックス」といい、高齢者が肺炎球菌によって、その名の通り肺炎にかかるのを予防しようとするワクチンです。「日本人の死因の第4位は肺炎です」といって盛んに予防キャンペーン(実はワクチンの宣伝)をやっているのはこちらのワクチンです。

もう一つが乳幼児用の肺炎球菌ワクチンで、商品名を「プレベナー」といいます。

これらの肺炎球菌ワクチンは、製造会社が違うから商品名が違うというのとはわけが違って、製造過程が全く異なるワクチンなのです。

「ニューモバックス」を乳児に接種しても免疫は獲得されません。乳児には肺炎球菌ワクチンが単独で入ってきてもそれによって抗体を産生する(免疫を獲得する)能力がまだないのです。「ニューモバックス」は肺炎球菌単独ワクチンだからです。

ところが、DPT三種混合は、日本では生後3ヶ月から公費による接種が可能です。諸外国では生後2ヶ月から始める国が多いです。DPTが乳児でも接種可能である秘密はDPTのDとT、つまりジフテリアと破傷風にあります。

普通ワクチンといいますと、病原体(細菌やウイルス)そのものやその一部を弱毒化して接種し、その病原体に感染したのと同じ状況を作り出しながらも発病せず免疫だけを獲得するというものです。

ジフテリアと破傷風は病原体ではなく、病原体が持っている毒素を弱毒化して接種し(トキソイドといいます)、ワクチンと同じように免疫を獲得させるのです。この弱毒化した毒素は乳幼児でも免疫を作らせることができます。だから生後2ヶ月の乳児にも接種できるのです。

肺炎球菌ワクチンをジフテリアや破傷風の毒素(もちろん弱毒化してあります)と結合させて製造すると、どういうわけか肺炎球菌に対する抗体も産生する(免疫を獲得する)というのです。

乳幼児用の肺炎球菌ワクチン「プレベナー」はジフテリア毒素と結合させて作ります。このようなワクチンを結合型ワクチンといいます。単独ワクチン「ニューモバックス」とはこのような違いがあるのです。

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