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肺炎球菌ワクチンのすべて

  • 2010年9月18日

肺炎球菌感染症の治療

肺炎球菌によって引き起こされる病気についてご理解いただいたところで、その病気の治療についてお話しいたします。

肺炎球菌もHib菌も溶連菌も皆細菌(バイ菌)です。細菌の治療には抗生物質を使います。抗生物質によって細菌を死滅させる(殺菌)か、発育できない状態にしてしまう(静菌)のです。殺菌的に働くか静菌的に働くかは抗生物質の種類によって異なります。

肺炎球菌にはペニシリン系(殺菌)の抗生物質が特効薬でした。「でした」なんていうと、今では効かない薬になってしまったかのようですが、全く効かないわけではありません。以前のように「ペニシリンさえあれば大丈夫」とはいかなくなってしまったのです。

それには「耐性菌」の出現という問題があります。耐性菌というのは抗生物質を投与しても死なない細菌のことです。

肺炎球菌には莢膜という殻の違いによって約90種類の血清型があることはすでにお話ししました。ですから、同じ肺炎球菌でも、今なおペニシリン系の 抗生物質がとてもよく効く菌(感受性菌といいます)もいれば、あまり効かない菌も、そして全く効かない菌(耐性菌)もいます。このような状況の下で抗生物 質の投与を続ければ、感受性菌ばかりが死滅してしまって、耐性菌の遺伝子を持った菌がどんどん増えることになってしまいます。

そして、困ったことには重症の感染症を起こすタイプの肺炎球菌の中に耐性菌が増えているのです。あるデータによりますと、ペニシリン感受性の肺炎球菌はこどもの菌血症患者から検出されたすべてのタイプの肺炎球菌の20%にも満たないとされています。

「抗生物質って何十種類もあるんだろ。ペニシリンが駄目なら他の抗生物質を使えばいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かにそうなんです。耐性菌対策は抗生物質の種類を替えることなんです。

ところがところが、何種類もの抗生物質に対して耐性を持った「多剤耐性菌」というのまで出現してきているのです。

別に細菌の味方をするわけではありませんが、細菌だって地球上の数ある生命体の一つですから、生き残りをかけて変異(耐性化)していくんですね。

そんなわけで、細菌感染症に対して抗生物質で治療をするという発想を転換しなければいけない状況になってきているというのが現状です。

では、どのように発想を転換するかというと、「病気になってから治療するのではなく、病気にならないよう予防の手段を講じよう」ということなんです。つまりワクチンによる予防を第一に考えようということですね。

さあ、いよいよ肺炎球菌ワクチンの出番です。

このシリーズの始めに、肺炎球菌ワクチンには2種類あって、一つは高齢者用のワクチン(日本では「ニューモバックス」という商品名です)、そしてもう一つが乳幼児用の結合型ワクチン(日本では「プレベナー」という商品名です)だと言うことをお話しました。

これからお話するのは後者、すなわち、乳幼児用の「プレベナー」についてだけです。高齢者用の「ニューモバックス」とは違いますから混同しないようにご注意ください。

「プレベナー」がどのようなワクチンかということは、シリーズの始めに「ニューモバックス」やHibワクチンとの比較をする中で、ほとんど説明がすんでいますので、ここでは省略いたします。

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