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肺炎球菌ワクチンのすべて

  • 2010年9月18日

「プレベナー」で何を予防するか?

Hibワクチンで何を予防するか?と尋ねられれば、ほとんどの方が即座に「髄膜炎!」と答えるでしょう。では、「プレベナー」で何を予防するか?と尋ねられたとき、皆さんはなんと答えますか?

もちろん「髄膜炎!」と答える方が一番多いのでしょうが、その脳裏には「中耳炎」とか「副鼻腔炎」といった比較的なじみのある病名がちらついたり、 「肺炎」なんていう病名もちらつくかもしれません。「菌血症」については、ほとんどなじみのない、初めて聞くような病名ですから、思い浮かべる方は少ない でしょう。

最初にはっきりしておきます。

「プレベナー」は髄膜炎や菌血症といった重症の侵襲性肺炎球菌性疾患(IPD)を予防するために作られたワクチンです。

ただし、このことは誤解を招く恐れもありますのであとで詳しく説明します。

「プレベナー」売り込み大作戦

超有名な先発ワクチンであるHibワクチンと同じ細菌性髄膜炎予防の「プレベナー」ですが、致死率と後遺症率を合わせればHib菌髄膜炎と同程度と はいえ、患者数からみると肺炎球菌髄膜炎はHib菌髄膜炎の1/3から1/4程度です。接種対象者へのインパクトもそれなりに小さくなってしまいます。

そこでワクチンメーカーとしてはなんとしても「プレベナー」の知名度を高めなければなりません。こうして考え出されたのが次のような作戦です。

まず一つはHibワクチンとの協働(抱き合わせ)作戦です。『「プレベナー」はHibワクチンと同時に接種することができます。両者を接種すれば乳幼児の細菌性髄膜炎の約75%は予防することができます。』という、Hibワクチンを利用した売り込み作戦です。

これはかなり説得力のある売り込み方法でしたが、肝心のHibワクチンの供給不足で、そう簡単に同時接種ができないという現実に阻まれて大きな効果を挙げることはできませんでした。

もう一つは、「肺炎球菌コワイゾ!」作戦です。この作戦は2段構えになっています。

第1段:菌血症を起こす細菌としては第1位
髄膜炎から攻めていったのではインパクトが弱い(Hib菌にはかなわない)ので、原因として一番多い菌血症について皆さんに知ってもらおうとしました。しかし、ほとんどの人が聞いたこともないような病名だったので思うような成果は得られませんでした。

第2段:中耳炎や副鼻腔炎などいろんな病気を引き起こす
それではというので、「健康な乳幼児にも潜んでいて、体力が落ちたときなどに中耳炎や副鼻腔炎を起こし、時には菌血症や髄膜炎などの重症感染症も引き起こす」という形での「肺炎球菌コワイゾ!」作戦も繰り広げられました。

こちらの作戦はそれなりに効果を挙げて、「プレベナー」に目を向ける人を増やすことができるようになりました。でも同時に、『「プレベナー」で中耳 炎や副鼻腔炎も予防できるのか?』という疑問を投げかけることになり、明確な回答がないままに、ちょっとした混乱状態をも招いてしまいました。

まるで私がメーカーの宣伝担当だったようなことを書いていますが、私の独断です。でも偏見ではないだろうと思います。ま、「プレベナー」売り込み大作戦はだいたいこんなもんだったろうと思います。

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