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肺炎球菌ワクチンのすべて

  • 2010年9月18日

アジュヴァントとは?

アジュヴァントはadjuvantという英語をカタカナ表記したもので、英語の「v」に相当する発音が日本語にはありませんからアジュバントとも表記されます。

このブログでもずっとアジュバントと表記していましたので、ここからはそれを引き継いでアジュバントでいきます。

adjuvantの語源はラテン語で「助ける」という意味です。ワクチンで使われるときは、ワクチン(抗原)が免疫(抗体)を作る働きを助けて(強めて)より確実な抗体にするという意味で免疫増強剤などと呼ばれます。

抗原作用を強める作用にはいくつかありますが、抗原と結合することで免疫応答細胞(抗体を作る細胞)に取り込まれやすくする作用とか、抗原と結合して抗原性を持つ物質の放出を遅らせ免疫応答細胞との接触時間を長くするなどの作用が考えられています。

ですからアジュバント自身が抗原抗体反応そのものを起こすことは理論的にはないと言えます。ただ、アジュバントそのものの毒性が問題になることはあります。

アジュバントは基本的には界面活性体で、家庭で使われている洗剤なんかも界面活性体です。「洗剤を注射されるなんて恐ろしい!」と思われるでしょう が、実際には副作用の出ないように工夫されたアジュヴァントが使われているので洗剤を注射されるわけではありません。もっともこの工夫の仕方が不妊だの、 民族浄化だのといった憶測を呼んでいるのも確かです。

アジュバントがなぜ必要なの?

ワクチンというのは、病原体(細菌やウイルスなど)を弱毒化(病原性を低下させる)して、その中で抗原性を持つ部分だけを取り出して接種し、体内に その病原体にだけ反応する抗体を作り出します。弱毒化が弱ければ病原性が残りすぎて発病してしまうし、弱毒化が強すぎれば抗原性そのものが失われて抗体を 作ることができません。

病原性をできるだけ低くして、それでいて抗原性だけは十分に維持させるために使われるのがアジュバントです。

アジュバントを使わずに安全で確実なワクチンが作れればそれに越したことはありません。なぜ製薬会社はそういう研究をせずに、アジュバントの研究ばかりするのでしょう?それはそのほうが手っ取り早いからですね。

そういう考え方に立てば、アジュバントは必要な物質だということになります。それに弱毒化した病原体は少量でも強力なワクチンをたくさん作ることができて製薬会社は儲かりますね。

新型インフルエンザのワクチン製造についても、日本のワクチン製造会社はアジュバントなしでワクチンを作るために十分な量のワクチンをすぐに用意す ることができなかったのに対して、海外の大手(巨大)製薬会社はアジュバントを使ってあっという間に何千万人分ものワクチンを用意してしまったわけです。

もちろん海外の巨大製薬会社が大量のワクチンを製造できるのは規模の違いもありますから(日本とでは規模が違いすぎる!)、全部が全部アジュバントのせいではありません。

アジュバントは有害なの?

子宮頚癌ワクチンで不妊や死亡例が問題になっているアジュバントは、実際には日本ではまだ承認されていない別の会社のワクチンに含まれるもののようです。このことはまた別の機会にお話しします。

アジュバントのすべてが不妊や死亡の原因になるということはありません。日本ですでに1億回近く、あるいはそれ以上に接種されているDPT三種混合 ワクチンにはアルミニウム系のアジュバントが含まれていますが、局所が赤くなったり腫れあがったりという副反応はあるものの、重篤で後遺症を残すような (不妊も含めて)副反応はほとんど報告されていません。

「プレベナー」にもアルミニウム系のアジュバントが含まれています。アルミニウム系のアジュバントが脳細胞に悪い影響を及ぼすという報告がないわけ ではありませんが、それらの報告は動物実験で、ワクチンのアジュバントとして使われる量よりかなり大量のアルミニウムを投与した場合の実験結果です。

ワクチンに含まれている程度の量であればそのような問題は起きないだろうと考えるのが妥当ではないかと思いますが、現在は否定的になってはいるもの の「ワクチンに含まれるチメロサール(保存剤)の蓄積が自閉症の原因になる」という報告も現実にあったわけですし、世界的にチメロサールの除去が進んでい ることを考えると、アジュバントなしのワクチンの開発をメーカーはもっと真剣に考えてほしいと思います。

たとえその歩みは遅くとも、昔ながらの鶏卵培養でアジュバントなしの新型インフルエンザワクチン製造を守り続けた日本のメーカーはエライ!!!

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