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肺炎球菌ワクチンのすべて

  • 2010年9月18日

接種の際の安全性

資料となったデータは、このワクチンの有効性のところで利用した、「プレベナー」発売前の、日本国内における臨床試験の結果です。したがって対象となったのは181名という少人数であることをご了承ください。

まず、副反応の発現率です。資料では、1回目接種・2回目接種・3回目接種・4回目接種と、接種回数ごとに発現率を提示していますが、あまりにも細かくなりますので、全体としての数字を計算し直しました。

副反応発現率は、181人に対して全部で701回の接種が行われ、副反応出現率は611回・87.2%でした。しかし、4回の接種のうち1回でも副反応が出現したお子さんの数は181人中178人で、実に98.3%、ほぼ全員に副反応が出現したことになります。

もちろん副反応といってもピンからキリまでですから、内訳を見てみますと、これの表現の仕方が誠に難しい。一人のお子さんにいくつかの副反応が一緒 に出現した場合、それぞれがカウントされますから、副反応の数は実際の人数より多くなります。ですから、個々の副反応の出現率を何%という数字で表すと余 計わかりにくくなってしまいます。

そこで、副反応を私なりに解釈した結果を掲載しようと思います。

まず、注射部位が赤くなる・はれる・硬くなる・痛みが残るといった局所の反応は約95%で出現します。しかし、次回の注射の時期まで残ることは経験上はなさそうです。

全身的な副反応としては、発熱が約55%に見られますが、そのうちの約67%は37.5℃以下の発熱で、39℃以上の発熱は約6%です。

発熱以外では、刺激に対して過敏・眠ってばかりいる・なかなか泣き止まないなどの神経的な副反応が約40%に出現しています。それ以外では、下痢・便秘・嘔吐・食欲不振といった消化器系の副反応が約20%報告されています。

こうやってみますとかなり副反応の多いワクチンということになりますが、こども診療所での経験では、副反応はもっと少ないという印象です。

少なくともアナフィラキシーショックのような緊急を要する重症の副反応は記載されていませんが、701回の接種のうちで、3回目と4回目にそれぞれ 1回ずつ、「呼吸困難」という副反応が報告されています。頻度でいえば、0.3%未満ですが、こういう副反応もあるということは認識しておいた方が良さそ うです。

もともとワクチンというものが無毒化してあるとはいえ、病気の素を体内に入れるわけですから、副反応ゼロということは期待しない方がよいのです。こ こで掲載した副反応調査の期間と人数の中ではたまたま重篤な副反応が経験されなかっただけなのかもしれないということは頭の片隅に入れておいてください。

この資料で見る限りでは、副反応の出現率は全体としては高いけれど、重篤な副反応はほとんど現れていない安全なワクチンであるといっていいと思います。

「プレベナー」を使い始めてまだ期間が短く、こども診療所での接種状況からすべてを判断することはいささか乱暴ではありますが、日本で多く使われて いる免疫補強剤(アジュバント)入りのDPT三種混合ワクチンと比較して、それほど副反応が多いとか強いという印象は、今のところ持っていません。

有効性と安全性の話が終わりましたので、次回からはいざ接種を受けようと決断したらどうするかという話に移っていきます。接種を受けるかどうかを決めるのは、何度も申し上げますが、保護者の方ご自身です。

その判断のお手伝いという意味で、接種を受けるかどうかを判断する基準となりそうな項目を整理しておく必要がありました。

このシリーズでもよくHibワクチンとの比較をしましたが、「プレベナー」を多くの方々に知っていただくためには、超有名な先発ワクチンである Hibワクチンを引き合いに出すのがもっとも簡便で最も有効な手段であることは間違いありません。そしてそれはメーカーの戦略でもあったのです。

でもここに保護者の方々に困惑や混乱を引き起こす原因も潜んでいたのです。

ここではその辺のところを整理してみたいと思います。

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